大新板化物飛廻双六(おおしんぱんばけものとびまわりすごろく)

(写真: 4枚)

(写真: 4枚)

わらべ館コレクション

制作年代

幕末~明治初期、もしくは大正期の後刷りか

寸法

48cm × 32.5cm

素材

形式

墨摺(すみずり)

紹介

「すごろく」という遊びは2種類あります。一つは「盤双六(ばんすごろく)」(盤上双六とも)といい、木製の台上でサイコロとコマを使って二人が対戦するもの。もう一つは、現代の私たちもよく知るふりだしから上がりを目指す「絵双六」という紙のおもちゃです。

前者は『日本書紀』にも登場する、たいへん歴史のある遊具ですが、近代以降は一般的に遊ばれることはなくなりました。後者の「絵双六」の形態は、13世紀後半に天台宗で年若い僧にわかりやすく仏法を学ばせる紙片として誕生したのが原型とされています。両者の仕様、遊び方が異なるにもかかわらず、なぜ同じ名前が付けられたかは明らかにはなっていません。絵双六は、江戸時代に出版文化が栄え、浮世絵という多色刷りの技法が飛躍的に発展した影響も受け、内容、ビジュアルともに多彩な展開を見せることになりました。

今回紹介する絵双六は、名古屋の版元で作られた墨摺りの作品です。やかん・ちょうちん・うちわなどの日用品に手足が生え、目鼻もついた化物が30マスに1体ずつ登場します。「ふりはじめ」(ふりだし)には、(やっこ)(足軽など)に扮したサイコロの目が並び、「上り」には、大釜が化けた「大将釜野将監焼安(たいしょうかまのしょうげんたきやす)」という威風堂々の武将が大きく描かれ、「出世双六」の要素もうかがえます。いずれのマスもユーモラスな化物の仕草が笑いを誘い、「手ぬぐひ」では、「愚か者は身なりもだらしない」という意味のことわざ「阿呆(あほう)の鼻毛で蜻蛉(とんぼ)を繋ぐ」そのままの絵柄です。また、「せった」の鼻緒がちょんまげのようにも見え、「見立て」のしゃれが効いています。

その他、現代の日常生活ではあまりお目にかかれない茶臼(ちゃうす)湯桶(ゆとう)・煙草盆などもあり、当時の日用品を知る画像資料にもなっています。当時の子供たちにとっても、遊びながら物の名前を覚える「〇〇尽くし」といった図鑑のような教育的要素もありました。
 
飛廻(とびまわり)」という双六は、「飛び双六」と「廻り双六」の要素を足したもので、前者はマスに示されたサイコロの目のマスへ飛び、後者はサイコロの目の数だけマスを進む遊び方です。本資料は、はじめは外側付近のマスへ飛び、中盤からは中心に近づくような飛び方を指示しています。上がりに近づいても、数マス戻る、あるいは1回休みのマスに飛ばされることもあり、予測がつきにくいスリルが味わえます。

ひとこと

付喪神(つくもがみ)」とは、室町時代の『付喪神絵巻』によれば、100年もの長きにわたって使われた道具類に宿る精霊とあり、家先に捨てられた道具が化物となる様子が描かれています。「つくも」は「九十九」とも書かれ、百に足らないまでも、非常に長い時間を意味するとされます。この双六の化物たちにも、付喪神の存在が透けて見えます。

参考文献

  • 『絵双六 その起源と庶民文化』 桝田静代 京阪奈情報教育出版株式会社 2014年
  • 『双六』 吉田修・山本正勝 文 築地双六館・翔奉庵 編 株式会社文溪堂 2004年
  • 『すごろくⅡ』ものと人間の文化史79-Ⅱ 増川宏一 法政大学出版局 1995年
  • 『伝統的な日本の遊び 双六』 小西四郎・壽岳章子・村岸義雄 株式会社徳間書店 昭和49年

展示場所

3階おもちゃの部屋