萬古焼(ばんこやき)のキューピー

(写真: 5枚)

(写真: 5枚)

わらべ館コレクション

制作年代

大正時代(1912~1926)

制作

萬古焼の窯元

寸法

頭頂部までの高さ27㎝、奥行(お尻から足先)22cm

素材

紹介

「キューピー」はアメリカ人のイラストレーター、ローズ・オニールが1909年に婦人雑誌『レディース・ホームジャーナル』上に発表したイラストのキャラクターとして正式に誕生しました。モデルになったギリシャ神話のクピド(キューピット)は綴りがcupidですが、オニールはオリジナリティを持たせてkewpieと命名しています。発表後はオニール自身による紙人形も作られていましたが、1912年には、アメリカのボークフェルド社が依頼したドイツ製(ケストナー工房)のビスクドールが誕生。翌年には日本でも国産第1号となるキューピーが作られました。その後コンポジション製(おがくずなどを糊で固めたもの)、セルロイド製など作りやすく安価な人形も登場。1914(大正3)年からの第一次世界大戦時には、ドイツに代わり日本製のセルロイドキューピーが盛んに輸出され、昭和初期には色やポーズなどさまざまなバリエーションのキューピーが人気を呼びました。

今回紹介するのは、現在三重県四日市周辺で作られている「萬古焼」(ばんこやき)のキューピーです。萬古焼は江戸時代中期の茶器に始まり、食器や土鍋、急須で知られますが、大正・昭和期には、ノベルティの貯金箱や玩具なども手がけてきました。このキューピーも大正時代(1912~1926)に作られた商品の一つです。

ご覧の通り、ローズ・オニール(上スライド画像5枚目の参考画像)の愛くるしいキューピーとは異なり、頭髪はちょんまげ風でやや面長、下がり眉の困り顔、そして、翼は魚のヒレのようにも見えます。また、おなかに謎の印がありますが、アメリカ製やドイツ製に付けられていた、真っ赤なハートにKEWPIEと記されたシールを模したものと思われます。

誕生から100年以上を経ても、商品のパッケージやご当地キューピーなどがいたるところで見られるように、日本のキューピーは、世界にも類を見ない息の長い人気を誇っています。

ひとこと

童謡にも歌われたキューピー。1923(大正12)年の「おもちゃのマーチ」(海野厚作詞)ではポッポ(汽車)と並んで2番の歌詞に登場。「キューピーさん」1924(大正13)年(葛原しげる作詞)、「キューピー・ピーちゃん」1930(昭和5)年(野口雨情作詞)など、タイトルになった童謡も作られ、当時からこどもたちに愛されている様子が伝わります。

展示場所

3階 おもちゃの部屋「夢とあこがれ」コーナー(常設展示)

参考文献

  • 『20世紀の天使たち キューピーのデザイン』 INAX 1995年
  • 『知られざる萬古焼の世界 創意工夫から生まれたオリジナリティ』 内田鋼一 誠文堂新光社 2015年
  • 「キューピー」Wikipedia 2023年11月1日閲覧