おもちゃの病院創立10年 「 おもちゃドクター座談会vol.1」
子どもたちに “ものを大切にする心” を伝え、おもちゃへの興味関心を深めることをねらいとして、わらべ館で毎月開院している「おもちゃの病院」は、この春、創立10年目を迎えることとなりました。
これを機に、専門技術を持った “おもちゃドクター” として、長年「おもちゃの病院」を支えてきた、岩田了さん・河村寛さん・谷浦征男さんと「おもちゃドクター座談会vol.1」を開催。
おもちゃ修理のボランティアをはじめたきっかけや活動のやりがいについて、わらべ館の山本がお話をききました。
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山本:
平成21年4月、童謡・唱歌とおもちゃのミュージアム わらべ館に「おもちゃの病院」ができて10年目に入りました。みなさんは創立当初からおもちゃの病院を支えてくださっているおもちゃドクターですが、では はじめに、おもちゃ修理のボランティアをやってみようと思ったきっかけについて教えてください。
岩田:
私は、これまで車の販売や修理をするカーディーラーで仕事をしていたのですが、退職して4ヶ月が過ぎた頃、たまたま見ていた新聞で、わらべ館がおもちゃを修理するお医者さんを募集しているといった記事を読み、応募しました。おもちゃを修理する活動なら、車修理の経験も活かせそうだと思えたことも、やってみたいと思えたきっかけでした。
河村:
私は自営業で家電販売の仕事をしています。仕事の中で販売した家電をメンテナンスすることはもちろん、家庭でもパンクした家族の自転車を手直ししたり、調子が悪くなった子どものおもちゃを修理したりということは日常茶飯事だったので、このようなスキルを活かした活動でお役に立てればと思い、おもちゃドクターに申し込みました。
谷浦:
私は自営業で電気屋をしています。元々機械いじりやものづくりには興味があって、自分でラジオを組み立てたり、木材を買ってきて棚を作ったり、折れた傘の骨を修繕したり…そういった作業が好きなんです。仕事でも趣味でも、普段は一人で作業をすることがほとんどですが、わらべ館でおもちゃを治してあげたら、きっと目の前で子どもがよろこんでくれるんだろうなと…実はその笑顔が見たくて、おもちゃドクターに応募しました。
山本:
みなさん、ありがとうございます。おもちゃドクターは、専門技術が必要とされるボランティアなので、スキル面でも経験が豊富な方々と出会えて、うれしく思っています。では実際におもちゃドクターとして、おもちゃ修理の活動をはじめられてからは、どんな印象を持たれていますか。
岩田:
いや~それがね、私が思っていた以上におもちゃというのは電気的な故障が多くて、それには驚きましたね。自分ではもっと車修理での機械的な修理経験が活かせると思っていたのに、電気的な故障となると、回路図やら基盤との関係やら、ひとつひとつそういった知識的なこともきちんと理解していないと修理なんてできないもので…この年になってイチからの勉強が必要になってしまい…最初の頃なんて、どこから手をつけてよいのか慌ててしまったのを今でも覚えています。
山本:
そうだったんですね。電気関係のお仕事をされていた河村さんや谷浦さんは、家電の修理経験もあるようでしたが、おもちゃの修理はどんな印象でしたか。
河村:
それがね、似たようなところもあるんだけど、おもちゃは家電ともまた違う。家電は使用目的が決まっているから、例えば掃除機がゴミを吸わなくなったとか、故障のパターンもある程度想定しやすいけれど、おもちゃは遊びが目的で作られているのもあって、そもそもどんな遊びができるおもちゃなのか、ひとつひとつが違うし、種類も多様。それに対する子どもの遊び方というのも、大人の予測がつかないような場合も多く、いろんな意味でおもちゃの修理には難しさを感じています。
谷浦:
そうそう、特に近年発売されている新しいおもちゃは、私も難しいと思っていて、1つボタンを押すと、いくつものモード切替の機能を備えていたりとか、とにかくおもちゃの構造が複雑化しているもんだから、部分的にココの機能だけが動かないといったピンポイントでの修理は、正常な部分との連動も考えて手を入れていかないといけないし、実にデリケートで難しい。
山本:
そうですね、私もおもちゃの病院の企画を担当しながら感じていたのですが、持ち込まれるおもちゃの種類や壊れてからの症状など、持ち主からのお話を聞いていると本当に1つとして同じものがない…そんな印象なんですよね。これまでやってきた中でも、持ち込まれた種類はほとんど違うし、たまたま同じおもちゃがやってきても、故障個所は全部異なるので、それぞれにあった修理法で応じる必要があって、そういった難しさはよくわかります。
岩田:
確かに、初めて見るおもちゃの修理というのはやっぱり手ごわいですね。難しいおもちゃの修理に行き詰った時、自分一人で悶々と考えていても答えはなかなか見つからないので、一緒に考えてくれる仲間がいてくれることが、私は本当に心強いです。おもちゃドクターみんなで知恵を出しながらこの活動に向き合ってこれたからこそ、長年続けられたんだと思います。
谷浦:
それは私も同じですね。みんなに助けてもらいながら自分で試行錯誤して、なんとかおもちゃが動いたら「よし!今度こそやったぞ」と、心の中でまずは自分にバンザイ!それからおもちゃを持ち主の子どもに返すんだけど、この瞬間が本当にうれしい。治ったおもちゃを手渡すと、どの子もニコッと笑って目をあわせくれる。元気のいい男の子なんて「やったー!!」って飛びはねる時もあるし、はずかしがり屋の女の子が「ありがとう…」って、ハニカミながら精一杯のお礼を伝えようとする時もある、その笑顔がたまらなくて、それが私の一番のやりがいです。
河村:
わかるわかる、確かに、なによりそれはおもちゃドクターとしての最大のよろこびだよね。私も子ども達からそうやって元気をもらいながら、これからもこの活動を続けていきたいと思っています。
山本:
本当にみなさんに支えられてのおもちゃの病院ですね。これからも楽しみながら活動していきましょう!
ありがとうございました。
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次回「おもちゃドクター座談会vol.2」では、おもちゃドクター 妹尾敬三さん・西尾新治さん・山内道男さんの3名からのお話をお届けします。