磁器製の将棋駒
明治期か
製造会社
不明
紹介
将棋駒といえば、木製駒やプラスチック製が一般的ですが、写真の駒は磁器でつくられています。産地は不明ですが、白磁に青の染色という特徴から、伊万里焼の駒ではないかと推測されます。伊万里焼は、佐賀県周辺でつくられている日本三大磁器の一角で、伊万里焼の将棋駒も実際に存在します。
土素材の駒に文字を彫り、そこに染料を流し込んであるため彫り埋め駒とみられますが、駒によって濃度が不統一です。文字や書体も将棋駒によく用いられるものとは異なります(玉将がない・「歩兵」ではなく「歩」・銀以外の成金が「おなじ」の異体字になっている「桂馬→仝」「香車→々」「歩→ヽ」等)。
また、金将や銀将、歩の一部は染料が文字をはみ出しているなど、あまり丁寧に作られた作品とは言えません。陶工が自分たちの遊び用に作ったものである(=商品ではない)可能性も考えられます。
寄木細工の箱には、将棋駒の入れ物であったという記載はなく、磁器製の駒の箱であったかは定かではありません。裏面には「鈴七商店 伊勢物産商□ 内宮宇治橋前」という印が施されています。鈴七商店は伊勢神宮内宮周辺に存在したお店で、明治大正期の絵葉書にもその名が確認できます。「内宮宇治橋前」には鈴七商店が経営する旅館(神洲館)があったらしく、この箱も旅館で販売していた可能性が考えられます。
ひとこと
磁器製の駒は、実用品というよりも、土産物としての意味合いがあったものと考えられます。ただし、写真の駒は四隅が丸くなっている点や欠損、色落ち、金将の自作など、実際に遊んでいたとみられる痕跡が確認できます。
展示場所
3階 おもちゃの部屋
こちらもどうぞ
- 煙出しロッキングホース「老フリッツ」 2024年 12月 13日
- 木ころん 2024年 10月 11日
- 日光寫眞遊び 2024年 8月 9日
- 雷雲の子B・C 2024年 6月 14日
すべての記事を読む