佐藤義美詩集 存在
(写真: 3枚)
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発行
高原書店
紹介
これは「いぬのおまわりさん」などで知られる童謡詩人、佐藤義美(1905~1968)が29歳のときに刊行した詩集です。佐藤義美はとくに童謡の創作をライフワークとして、すぐれた子ども向けの文学作品を多く遺しました。一方で「現代の童謡をつくるためには、現代詩を究める以外に途はない」として、大人に向けた現代詩の創作にも取り組んでいました。
この詩集は全部で49編の詩から構成されています。「悪いピクニック」「失礼な顔」のような少しぎょっとするタイトルの作品から繰り出される、2人の人間(“私”と“あなた”)の関係性を象徴したモチーフの描写には、とくに鮮烈なものがあります。やさしくユーモアあふれる彼の童謡作品からはあまり見えてこない、義美の聡明でモダンな一面がふんだんに楽しめる一冊です。ちなみに詩集の装丁も義美自身が手掛けています。詩集の最後には「リボンをつけて上からくる日曜」という作品の曲譜もあり、義美の友人である高木東六※1が曲をつけています。ときに難解さも感じる義美の詩にあわせ、4拍子と3拍子、2拍子をくるくると行き来する、非常に凝った難しい曲に仕上がっています。
当館所蔵の詩集『存在』には、表紙をめくってすぐのページに「柴野民三様 佐藤義美」と義美の署名があります。このことからこれは義美が柴野民三※2に宛てて贈ったものであることがわかります。
- 高木東六(1904~2006)は鳥取県米子市出身の作曲家。代表作に「水色のワルツ」などがある。
- 柴野民三(1909~1992)は東京都中央区出身の童謡詩人、童話作家。代表作に「かまきりおばさん」などがある。大の風呂好きで、義美と鶴見正夫(「あめふりくまのこ」の作詩者)と3人で銭湯に行ったエピソードなどが残っている。
ひとこと
佐藤義美は15歳の時に神奈川県横浜第二中学校(現在の横浜翠嵐高校)で高木東六と出会い友人関係となります。義美は自身の音楽遍歴を語る文章のなかで「中学生の三年頃、同クラスに高木東六がいて、昼休に講堂に忍びこんで彼が奏するピアノをきいたのが、ピアノの音を聞いた初めだった。」と回想しています。
今年度ともに生誕120年の節目を迎える2人。佐藤義美の出身地である大分県竹田市、高木東六の出身地である鳥取県米子市では、それぞれ記念のコンサートやイベントが催される予定です。
展示場所
わらべ館1階 うたの広場(2024年7月18日から2024年9月17日まで展示)
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