ソビエト社会主義連邦共和国時代の民族衣装人形
(写真: 6枚)
(写真: 6枚)
1980年代
制作
メーカー不明
寸法
人形本体 幅11cm ✕ 奥行5cm ✕ 高さ30cm
おもな素材
プラスチック、布
解説
ソビエト社会主義共和国連邦(通称「ソ連、ソ連邦」)は1922年に誕生した連邦国家であり、いくどかの変遷を経て、1956年から1989年まではロシアをはじめとした15の共和国で構成されていました。ユーラシア大陸の東端から西はヨーロッパに至り、北は北極海に面し、南は中国、モンゴル、中東諸国に隣接する長大な連邦国家には多くの民族が含まれており、それぞれの特徴的な民族衣装をまとった人形たちは、すなわち連邦国家の威容を誇る象徴ともなりました。
人形のドレスの裾近くに縫いつけられたタグには、各共和国の名称がキリル文字で記されています。15の連邦共和国とそれぞれの人形が身につける特徴的な女性の衣装は次の通りです。
※表記は2022年現在の国名
- ロシア:北部ロシアで着られたサラファンというジャンパースカート状のドレス
- ウクライナ:魔除けとなる幾何学模様の刺繍を施したソロチカというシャツと花冠
- ウズベキスタン:チャパンというキルトや絣のローブを着用
- カザフスタン:立ち襟で裾広がりの上衣コイレクを着用。帽子の頂にワシミミズクの羽
- ベラルーシ:おもにシャツ・スカート・エプロンで構成。ロシア、ウクライナと似ている
- ジョージア:ロングジャケット風のカバという上着を着用
- アゼルバイジャン:花模様のスカーフ、ゆったりしたズボン、チョッキなどを着用
- リトアニア:特産のリネン素材のシャツ、エプロンに、円筒状の帽子を着用
- ラトビア:刺繍を施したシャツ、スカート、肩掛け(ショール)、冠のような帽子を着用
- キルギス:上衣に袖なし上着カムズルとロングスカート、毛皮の縁取りの帽子
- タジキスタン:縁なし帽をかぶり、チョッキ、長い上衣クルタの裾から脚衣ロジムを見せる
- モルドバ:白と黒を基調として、多くの花模様をあしらっている
- アルメニア:更紗や金刺繍などが施されたベルベット製の前掛けゴクノツを着用
- トルクメニスタン:襟や裾などの縁に刺繍を施した上衣クイネクの下に裾すぼまりの脚衣
- エストニア:提灯袖の白いブラウスにスカート、未婚女性は鉢巻風のリボン付き帽子
各地の民族衣装は、複雑に構成される民族、宗教、そして社会情勢などにより変化しており、この人形たちが身にまとう衣装は、制作当時において簡易化されたイメージを表したものです。
各民族衣装で施される刺繍の模様は信仰に基づいたり、当地の自然を象徴したりと、そのモチーフはさまざまです。また、見た目の美しさだけでなく、襟もとや袖、裾などの布地の補強や防寒も目的の一つでした。かつては日本でもこどもの着物の背中に「背守り」という刺繍を施したように、縫い目には邪なものを寄せ付けない力がある、とされています。
ひとこと
外国の要人の来日などは、当地の民族衣装の着用例が見られる絶好の機会です。ジョージアの男性が着用するチョハという上着は、ナウシカやスターウォーズに登場するジェダイの騎士の衣装に似ていると話題になりました。
展示場所
3階おもちゃの部屋 期間:展示中~2022年8月31日(水)
参考文献、Webサイト
- 「5.ヨーロッパ(バルト三国) 6.ロシア 7.中央アジア」加藤定子著 『世界の民族衣装の事典』丹野郁監修 東京堂出版 2006年
- 『国際理解に役立つ 世界の衣食住10 ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカ、オセアニアの民族衣装』久保田陽子著 小峰書店 2011年
- 「ソ連の民族衣装とはどのようなものだったのか?」ニコライ・シェフチェンコ著 ロシア・ビヨンド 2022.7.20閲覧
- 「ソビエト連邦にあった共和国の完全リスト」同上 2022.7.30閲覧
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