(1) 木彫り十二支【岩美町】
岩美町岩井温泉の工房で作られている木彫りの十二支は、昭和9年(1934)の商工省(当時)による工芸展で入賞し、年賀切手のモチーフに選ばれるなど、今では鳥取県を代表する郷土玩具の一つとなりました。木工ろくろで削りだしたエゴノキのパーツを組み合わせて、胡粉や顔料などで彩色し、それぞれの特徴をとらえた愛らしい表情に仕上げています。
(2) 麒麟獅子・鳥取張り子【鳥取市】
鳥取市を中心とした因幡地方には、全国的にも珍しい麒麟獅子と呼ばれる獅子舞が古くから伝わっており、その名は、姿が似ている中国の想像動物である麒麟に由来します。麒麟獅子が現れる権現祭では、先導役の「猩々」や付随する「青の鼻たれ」「ぬけ」の面も登場します。後にはそれらに加え、天狗や狐、因幡の白兎面も張り子でつくられ、玩具となりました。
かつて鳥取市には、張り子を中心とした人形等の制作や古玩の復興に取り組んだ工房があり、地域の昔話や風俗をモチーフにした数十種類の郷土玩具が作られていました。
(3) 木工の干支・ひな 【鳥取市】
鳥取県産の杉や檜を用い、単純な線と鮮やかな色彩で表現しています。十二支の動物は、栗、欅、桑など木目をいかしたものがあり、ひなは、流し雛に残る梅鉢や松葉の柄を描いた立ちびなが作られています。
(4) 流し雛【鳥取市】
形代(かたしろ)としての雛を流し、身の汚れや厄をはらう古い習俗が、鳥取では現在も残されています。鳥取の流し雛には数種類の型がありますが、代表的なものは、桟俵の上に親指大の内裏雛を載せたもので、桟俵の大きさに応じて、雛の数が2人から十数人のものまであります。鳥取市上町の工房や、流し雛の行事が続く旧用瀬町の住民グループにより作られています。
(5) 堀越土人形【八頭町】
昭和10年(1935)頃まで、瓦焼きのかたわらに作られ、土天神と並べて、弥生の節句に飾られていました。
(6) 干支の土鈴【若桜町】
鈴の音は邪気を払うと言われ、神社仏閣の祭礼や縁起にまつわる土鈴が全国各地で作られています。若桜では、干支の生き物が豊穣を意味する俵を抱えた型と合わせて愛らしい表情で土鈴に形作られています。
(7) はこた人形(倉吉張り子)・やっちゃ【倉吉市】
「はこた」とは、方言で純朴な娘を意味する「はーこさん」、あるいは「はうこ」(這う子)の転じたものだと言われています。この娘さんの姿をした張り子人形は、少女たちのよき遊び相手でした。江戸時代中期から続くとされる倉吉の張り子は、このほかにもお面やだるま、しろうさぎなどが作られています。
「やっちゃ」は、剣道の掛け声の「やっとう」から転化したものだと言われています。40センチほどの木刀で、端午の節句祝いに菖蒲刀として男の子に贈る風習がありました。大山祭で売られ、「大山のやっちゃ」の名で親しまれています。はこた人形と同様、「赤物玩具」の一つで、こどもの疱瘡除けの願いも託されていました。
(8) 北条土人形【北栄町】
戦後、倉吉の土人形などから着想を得て作られた、手のひらに乗るほどの小さな土人形で、土地に伝わる昔話や神話の住民たちを和やかな表情に仕立てています。製作者の名前を取って「れんべい人形」とも言われており、300種類ほどを一人で制作、同じ干支の動物でも数種類の型があります。
(9) 米子の天神・御来屋の土人形【米子市・大山町】
鳥取県では、弥生の節句に土人形の天神を飾って男児の成長を祈る風習があり、「土天神」「泥天神」とも呼ばれました。天神像のほか、御来屋(旧名和町)でつくられた金太郎などの土人形も同時に飾られました。
(10) 境港の土人形【境港市】
れんべい人形の跡を継ぐように、神話や干支などをモチーフにした手のひらに乗る土人形が誕生しました。境港の土地柄を反映して、妖怪をモデルにした作品に特徴があります。