煙出しロッキングホース「老フリッツ」
(写真: 5枚)
(写真: 5枚)
1980年代
制作者
シュタインバッハ(STEINBACH) ドイツ
素材
木製(オルゴール付)
寸法
幅8.5cm × 奥行19cm × 高23cm(羽根部分除く)
紹介
首に王冠の印を付けた白馬には、羽根飾りの付いたトリコーン(「三角帽子」とも※1)をかぶる男性がまたがっています。箱のラベルに表記された”Räucher Männchen Der Alta Flitz”は、直訳すると「喫煙する男性 老フリッツ」。フリッツとは現在のドイツ北部とポーランド西部にあったプロイセン王国のフリードリヒ二世(フリードリヒ大王 1712~1786)晩年の愛称です。彼の治世において、同国は国政、軍事、文化芸術面で拡張、発展を遂げました。彼はフルート演奏や作曲を得意とし、バッハの次男C・P・E・バッハを王室楽団員に迎えるなど、音楽にも造詣の深い人物でした。
※1 トリコーン(三角帽子)
ベルリン市民に愛称で親しまれた「老フリッツ」ですが、おもちゃの彼は、大きく口を開けた元気な少年のように見えます。くるみ割り人形とともにドイツの木製人形を代表する煙出しは、海外ではsmoker(スモーカー)と呼ばれています。胴体の真ん中から土台の下半身と体内が空洞になった上半身に分かれており、土台の受け皿に火をつけた香を載せ、上体をかぶせると、煙が口から出てきます。フリッツが右手に持つジャーマンパイプと呼ばれる喫煙具から煙草を吸って煙を吐く様子を表しているのでしょう。市販されている香は直径約1cm、高さが約2cmの円錐形で、バニラやシナモン、シダーウッドなどさまざまな香りが楽しめます。そして、この煙出しにはもうひとつ仕掛けがあります。白馬の側面にあるねじを巻き、ストッパーを引くと、胴体に仕込まれたオルゴールが鳴り、底板の一部が角度をつけはじめ、馬がゆっくりと後に傾きます。底板の角度が戻ると同時に馬は前後に揺れ動き、この動きをくりかえします。馬の胴体内に仕込まれたカム※2 が回転し、底板を押し上げることで、この動きが生まれているのです。
※2 カム:運動の方向や大きさを変える機械要素。部品。
メーカーのシュタインバッハはドイツ東部のエルツ地方において、木工ろくろによるくるみ割り人形、煙出し人形などの制作に長らく携わっています。第二次世界大戦後には、エルツから北部のホーエンハーメルンに拠点を移さざるを得ませんでしたが、そこで連合国軍の米兵向けの人形が売れ、米国への市場開拓の道が開かれました。20世紀末にはエルツ地方に改めて工場を設置し、2000年代には売り上げのピークを迎えます。その後、金融危機のあおりで倒産に至ったものの、現在は、新たな経営者のもとで、看板商品の伝統的なくるみ割り人形に加え、新しいデザインの木製人形も制作しています。
ひとこと
オルゴールのメロディーは、フリードリヒ二世率いるプロイセンとオーストリアが戦った普墺戦争において、プロイセンの勝利を記念して作られた「ケーニヒグレッツ行進曲」という曲です。ドイツでは今でも行進曲としてよく演奏され、ゲームや映画でもドイツ軍をイメージする曲として流れます。
展示場所
3階「おもちゃの部屋」
参考⽂献・Webサイト
- 『ドイツおもちゃの国の物語』川西芙沙 文 一志敦子 絵 東京書籍 1996年
- 「フリードリヒ2世(プロイセン王)」Wikipedia 2024年12月3日閲覧
- 「私たちのストーリー」STEINBACH HP 2024年12月3日閲覧
- たばこと塩の博物館HP 「外国の喫煙具」 2024年12月3日閲覧
- 「ケーニヒグレッツ行進曲」Wikipedia 2024年12月4日閲覧
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