新版 鳴もの盡し雙六
(写真: 7枚)
(写真: 7枚)
発行年
明治41(1908)年
発行
堀切玉蔵
紹介
「鳴物づくし」という題のとおり、各マスに楽器などの鳴り物が描かれたすごろくです。
スタート地点(振り出し)のマスにはお祭やぐらで和太鼓を叩く男性二人が描かれ、進むごとにバイオリンやふえ、太鼓、でんでん太鼓、ラッパ、三味せん、つづみ、陣太鼓、琵琶、つり鐘、胡弓、月琴、鉦叩、尺八、鈴、ほら貝、木琴、金棒引、蓄音機、琴、木魚、オルガンと当時普及していたであろう多種多様な鳴り物が続々登場します。ゴール(上がり)のマスには、チューバやバスドラム、クラリネット風の縦笛を吹く軍楽隊が「音楽隊」として描かれています。変わり種としてすず(イラストは神社のすず)や大煙火(花火)、さらに雷神やタヌキの腹までもが鳴り物扱いされており、親しみやすいイラストと鮮やかな彩色も相まって、眺めるだけで楽しいすごろくです。
タヌキの腹を鳴り物扱いといえば野口雨情作詞、中山晋平作曲の「証城寺の狸囃子」が思い浮かびます。この曲の登場は大正13(1924)年であるため、その15年前にこのすごろくが発行された時点で「タヌキといえば腹太鼓」のイメージが浸透していたことがわかります。化けダヌキが夜に太鼓の音を響かせるという伝承は、江戸時代から既に存在していたようです。そこから着想を得た浮世絵師が自分の腹を叩くタヌキを描き始めたり、タヌキが命乞いのために腹太鼓を打つ狂言『狸腹鼓』が上演されるようになったりしたことからタヌキの腹太鼓が徐々に定着していきました。それが童謡「証城寺の狸囃子」に繋がり、広く一般に知られるようになりました。のちに「山の音楽家」や「こぶたぬきつねこ」などにも登場してくる「タヌキ=ぽんぽこぽん」というイメージは、意外と伝統的な日本文化のひとつなのかもしれません。
ひとこと
すごろくに描かれている鳴り物のなかには、現代ではあまり聞かないものもあります。たとえば「陣太鼓」は、戦場で軍勢の進退の合図として打ち鳴らした太鼓のことを指します。また「鉦叩」は単に鉦を叩くという意味のほかに、僧の恰好を真似て鉦を叩きながら読経をすることで金品を得る人々のことを指す意味もあったようです。「金棒引」は、金属製の輪のついた棒をシャンシャンと鳴らしながら夜警をする人を指します。棒を鳴らしながらお祭の神輿を先導する「金棒引」については現在でも見ることができます。
展示場所
1階 木造教室前(2025年3月4日から2025年4月15日まで展示。)
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