マヤ系先住民の民族衣装人形コレクション
(写真: 7枚)
(写真: 7枚)

制作年代
1990年代~2010年頃
制作者
マヤ系先住民
制作地
グアテマラ共和国
寸法
–
おもな素材
布、木
紹介
こちらは令和5年度に寄贈されたマヤ系先住民の民族衣装人形のコレクションです。寄贈者は画家のご夫妻で、1990年代から2010年代にかけて、現地の様子をスケッチするため、鳥取県からグアテマラへ何度も足を運びました。中米に位置するグアテマラは、マヤ文明が栄えた地で、現在もマヤ系先住民が暮らしています。寄贈者は、現地の市場で出合った色鮮やかで素朴な温かみのある人形に惹かれ、また作り手であるマヤ系先住民の女性たちの生活を支援する意味を込めて収集を続けられたそうです。
人形は、グアテマラに住むマヤ系先住民の女性それぞれの手仕事によるもので、人形の造形は多様です。共通して見られる特徴―刺繍で描かれた切れ長の目や、糸で立体的に起こした、黒々とした艶やかな髪、そしてカラフルな衣装―からはマヤ系民族のアイデンティティを見出すことができます。
マヤ民族の末裔である現代のマヤ系先住民の衣装は、織物で作られます。織物文化は、マヤ文明の時代から続く、女性中心の伝統です。マヤ文明研究者の児島英雄氏によると、「織物は数に強い民族の産物」とされています。「経糸を張っただけの織り機へは下図が描けない為、図柄や文様は糸目を拾う「数」で織り出すことになり、数の概念がしっかりしていないと良い織物は出来にくい。」とされ、高度な数学と天文学を誇ったマヤ文明で受け継がれてきたのもうなずけます。
マヤ文明の頃からの伝統的な衣装は、村ごとに違いはありますが、基本的に貫頭型のブラウス(ウィピル)と巻きスカート(コルテ)、帯(ファハ)で構成されます。女性は頭飾り(シンタ)、肩掛け(ペラッヘ)、アクセサリー(チャチャレス)などを身に着けます。一方男性の衣装は、16世紀のスペインの侵攻による洋装化の影響が見られ、征服前は腰帯やふんどし、肩掛け、短い貫頭衣が用いられましたが、征服後はシャツ(カミサ)、上着(サコ)、パンツ(パンタロン)、帽子(ソンブレロ)が主流になりました。同時期、女性の衣装にも洋装が取り入れられ、大きなフリルのついたブラウスなども見られるようになります。




肩掛け(ペラッヘ)や多目的布(スーテ)は子どもや荷物を背負うためや、寒さ除け、日よけなどに用いられます。
写真左)アロテナンゴ自治体の伝統的な民族衣装を再現した人形です。
また「グアテマラ・レインボー」と称される鮮やかな色使いも衣装の特徴であり、伝統的な色の組み合わせは方角に色を宛てるマヤの世界観に基づき、太陽が昇る東(赤)と天上界を示す北(白)を上半身に、太陽が沈む西(黒)と地下世界を示す南(黄色)を下半身にまとうことが多かったようです。1950年以降ハイウェイが開通し、ラメ糸やアクリル糸、化学染料が入手可能になったことで、衣装は現代化が進み、より色彩豊かになりました。このようにマヤ系先住民の衣装は伝統を受け継ぎつつ、外来の文化を取り入れて柔軟に変容しています。これらの特徴は、着古した民族衣装や手持ちの布の端切れから作られていることが多い人形の衣装にも反映されています。

写真左)男女の人形。厚手の生地が用いられ、標高の高い地域性を感じさせます。
写真右)キチェ族の儀式用の男性の民族衣装です。

ブラウス(ウィピル)は、現代的な布を用いて作成されています。巻きスカート(コルテ)の生地は織です。

ブラウスの襟口には大きなフリルがついています。
ひとこと
マヤの神の一人、月の女神イシュチェルは織物の女神としても描かれ、マヤ文化圏の織物文化を象徴する存在です。マヤ文明の文字と絵が記された「マドリッド絵文書」には機を織るイシュチェルの姿が描かれています。
展示場所
- 3階ギャラリー童夢 ~2025年11月16日まで
- 3階おもちゃの部屋 2025年11月18日~11月30日まで
参考文献、Webサイト
- 東京家政大学博物館「五色の燦めき—グァテマラ・マヤ民族衣装展―」1998年、東京家政大学出版部
- 八杉佳穂「現代マヤ—色と織に魅せられた人々」1995年、財団法人千里文化財団
- 石井真佑、藤巻正己「立命館大学人文科学研究所紀要(106号)」「アンティグア・グアテマラにおける民族衣装の観光商品化とインディヘナの女性たち―グアテマラ織りとウィピルをめぐって―」
- 実松克義「三千年以上続いた謎多き文明のすべて 古代マヤ・アステカ・インカ解剖図鑑」2024 株式会社エクスナレッジ p86
- 青山和夫「マヤ文明を知る事典」2015年、東京堂出版
- 丸山勝三「続で・こらそん」1996年、富士書店
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