『赤とんぼ』第二巻第十二號
(写真: 5枚)
(写真: 5枚)
昭和22(1947)年12月1日
出版社
実業之日本社
紹介
『赤とんぼ』は、児童文学者で編集者の藤田圭雄(たまお)が主宰し、昭和21年4月1日に創刊された、戦後初めての本格的な児童雑誌です。
創刊にあたり「われわれは何にとらわれることもなく、あらゆる面から、あらゆる階層の人人の協力を得て、子供たちの世界に限りなき夢と知識の泉をそそぎかけたいと願っている。どん底に落ちた日本を美と力に満ちた国に作り上げて行かねばならぬ今の子供たちに、どちらへもかたよらぬ豊かな情操を養い、暖い心と正しい判断力を持った人間にするように、あらゆる努力を傾倒したいと思っている。大正の頃鈴木三重吉氏によって主唱された赤い鳥の運動をわれわれはまだ昨日のことのように覚えている。われわれの今度の仕事を通じて子供の世界にもう一度輝かしい文藝復興の時が将〔ママ〕来されたならその喜びは限りない。」と抱負を述べています。
その内容は、詩や童話、童謡のほか、翻訳ものがあったり、綴方を募集したり、天気予報の話といった教養読物があるなど多彩なものでした。
第一巻第三號からは毎号曲譜付きで童謡が掲載されるようになりました。その中心を担ったのが詩人のサトウハチローと、鳥取県米子市出身の作曲家・高木東六です。高木は同誌に掲載された全30曲のうち26曲もの作曲を手掛けています。『赤とんぼ』の作曲を高木が担当するようになったのは、主宰者の藤田と詩人のサトウが作曲を誰にするか検討した際、サトウが「高木東六さんはどうだろう」と発案し、伊那に疎開中の高木へ依頼したことが始まりと言われています。
今回紹介する第二巻第十二號には、サトウハチロー作詞、高木東六作曲の「クリスマスのあくる朝」が掲載されています。この曲は、一般的なクリスマスソングとは一味も二味も違う内容で、クリスマスの翌朝、道に落ちていた赤い頭巾を子供達が発見するところから始まります。子供達はきっとサンタが忘れたに違いないと話しますが・・・本当の持ち主は?という、ちょっと変わった面白い内容の作品です。ぜひ現物で結末をおたしかめください。
今號はクリスマスにちなみ表紙は部屋の中から外の雪景色を眺める子供と、窓の外には雪に舞う天使が描かれています。また、百田宗治(「どこかで春が」の作詞者)の4編の詩「雪詩集」に添えられた、サンタや雪の結晶などの挿絵も可愛く魅力的です。
ひとこと
『赤とんぼ』は、全巻、復刻版をわらべ館のライブラリーに開架しています。この第二巻第十二號には他にどんな詩や読み物が掲載されているかじっくりご覧ください。また、他の巻にも是非目を通して、『赤とんぼ』で発表された全30曲の童謡がどんな作品かみてくださいね。
なお、『赤とんぼ』で発表された最初の童謡「チップタップロンロン」は、わらべ館のYouTubeで公開中です。こちらもお楽しみください。
展示場所
1階うたの広場(2023年12月20日~2024年1月16日まで)
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