『金の星』第5巻第1号(正月号)
(写真: 5枚)
(写真: 5枚)
1923(大正12)年
出版社
金の星社
紹介
『金の星』は、1919(大正8)年に創刊された雑誌『金の船』の流れを汲んで、1922(大正11)年から刊行された児童雑誌です。この第5巻第1号は、ちょうど今から100年前の1923年1月に刊行されました。
月刊雑誌の多くは、同年に刊行した1月号から12月号までのまとまりを「1巻」「2巻」と数えます。同書は『金の星』としては創刊2年目の1月号であるため、本来ならば第2巻第1号と数えるところですが、『金の船』からの流れで数えられているため「第5巻第1号」となります。
童謡欄には野口雨情作詞、本居長世作曲の「貝遊び」や、若山牧水による「雁が来た」、野口雨情の「辯慶の鐘」が掲載されています。
100年前はこのように、雑誌を通して童謡が子ども達や音楽の先生に届けられていました。
雑誌『金の星』にとって、この第5巻第1号はひとつの区切りの号となっています。なぜなら、この号から出版社名が「金の船社」から「金の星社」に変わっているからです。
そもそも『金の星』には、『金の船』の編集者であった斎藤佐次郎が、発行人とのいざこざの末に『金の船』刊行の権利を取得できず、泣く泣く類似の誌名で創刊した、という裏事情があります。
その未練からか、『金の星』の出版社はしばらくの間「金の船社」と名乗っていました(ちなみに雑誌『金の船』の出版社は「キンノツノ社」で、いざこざ後も発行人を中心に引き続き『金の船』を刊行しました)。
「金の星社」の発行による、この第5巻第1号からは、心機一転にかける斎藤の思いが伝わってくるようです。
ひとこと
出版社名が変わって再出発した『金の星』第5巻第1号。実は読者からの投稿作品の懸賞募集もこの号から始まっています。子ども向けの自由画、幼年詩、綴方(作文)の部では、よくできた人に『金の星』特製の賞品が贈られました。一般向けの部では、「推薦」に選ばれた童話には5圓、童謡には作詞と作曲で2圓ずつ、「特選」に選ばれた童話には10圓、童謡には5圓ずつ賞金が出ました。
当時の貨幣価値は単純に計算できませんが、仮に1921(大正10)年と2022(令和4)年11月の企業物価指数(戦前基準指数)を基準に計算すると、2圓は現在でいうと約1,400円、5圓は約3,450円、10圓は約6,900円となります。お小遣い稼ぎには程よい金額設定といったところでしょうか。
展示場所・期間
わらべ館1階 童謡の部屋 (2023年1月26日から同4月18日まで展示)
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